前書き:
レースに関して私はほとんど無知である為、演出はそれ以外の部分に焦点を当てて説明していきます。
脚本と演出の受け取り方はどちらも人それぞれである為、絶対的なものではありません。
また、用語は私独自の解釈や造語を含みますので、必ずしも正式なものではない事にご注意ください。
最終話のネタバレを含みますので、未視聴の方はひとまず全話視聴してきてください。
つうかあ 第一話 『Exhibition』
構成上のポイント
・ 主要キャラの顔見せ
・ 蘊蓄(うんちく)がましくならない程度の過不足無い解説 (設定とニーラーについて)
・ 最終話でのゆりとめぐみの逆転勝利を必然たらしめる伏線と前振りをいくつか配置
・ レース時に何度も挿入される回想によって、人物描写の方が主眼であることを示す
・ “派手なバトルは決勝レースでのお楽しみ”、と語らせて予告しておく
伏線&前振り 伏線……後になって意図が判明する布石 / 前振り……段階を踏んで繋がりを滑らかにする為の布石
・ ゆりとめぐみが優勝候補であることは実況で語られている
・ ゆりとめぐみが通じ合っていることが間接的にそれとなく描かれている
・ “どんな逆境に遭遇しても、必ず立ち上がれ” (明日葉丸の名付けエピソードでもある)
・ “マン島で勝つにはマン島に住むのが一番” (地元の有利さ)
・ 幼少時のゆりとめぐみを見せている
(第八話でも子供の頃の二人は描かれる。これらと最終話での回想が、二人で走るのが好きという純粋さを示している)
演出など:
<作画的演出:表情>
第一話ではなくオープニングにて。二人が互いを信頼し合っているのが伝わってきます。
<構成:伏線> + <作画的演出:レンズ効果 / 象徴(二つに折れるアイス = 平等さ)>
こちらもオープニングにて。色は逆ですが、最終話での回想に繋がります。
最終話ではアイスは緑(たぶん明日葉)で、背景は夕方でオレンジでした。
円形絞りによる玉ボケは、穏やかさを演出しています。(ただし、特に理由なく使う場合も少なくありません)
↑これが最終話での回想時。
<作画的演出:所作>
選手紹介の際、双子ペア以外で唯一動きが同じな二人。表情もほぼ同じ。違いは瞬きのタイミングのみ。
動きが異なっていても繋がりが浅いわけではありませんが、初見の視聴者にとっては同じ方が息が合って見えます。
<構成:伏線>
幼少時の二人は第八話でも描かれます。
コーチに会いに行く為にマシンに乗るのでは、単なる手段に過ぎずマシンが可哀想です。
(二人で)走ることそれ自体が目的だった頃は純粋でした。最終話ではそれを思い出して優勝します。
以下の他にも、数カット動きがシンクロしている箇所がいくつかありました。言葉がハモったりも。
はつね曰く、「ほーんとそっくりねぇ。息が合ってるのも頷けるわ~」とのこと。
<作画的演出:構図>
二人の後ろにある、建物を支えている部材が、二人の席から伸びて交わっています。
偶然の産物かもしれませんが、二人が通じ合っていることを暗示している可能性があります。
また、その交点が高い位置にある為、高い次元で心が重なっているのだという解釈も可能です。
更に、ローマ字のAを見出すことも可能でしょう。
流石に深読みが過ぎるので、やっぱり↑は無しで。そこまでの細かい演出は娯楽作品では不要。
ゆりとめぐみは自分を理解してくれると感じたことで、コーチに恋するようになりました。
しかし、コーチはドライバーとパッセンジャーというものを普遍的に理解しているだけであり、
女の子として理解しているわけではありません。それ故、最終話でベティ・バーチャルと別れることになりました。
まりあとゆりあの恋した青年もそうですが、作中で男性と結びつく可能性は切り捨てられています。
息が合っているせいで、クロスカウンターが決まってしまいました。
この場面の真相は後に第十話で明らかとなりますが、象徴として捨象して捉えるなら、その意味合いは変わってきます。
第四話で語られることですが、大切だからぶつかるということです。
最終話でもクロスカウンターが決まることで、二人の関係がいつまでも続いていくという事が示されます。
感想:
ゆりとめぐみは良いケンカップルです。最終話での二人の信頼が何より魅力的でしたが、
同じく最終話で見せてくれた、ゆりのめんどくさい所とかわがままな部分が可愛過ぎます。
他のカップルについては後に。いずみなぎさペアで、ある種の主従百合について目覚めさせられた感ありです。
この一話は出だしの構成としては完璧と言えるものでした。
最終話の逆転勝利までの伏線も、ここではまだ一部ですが早くから張られています。
“私は私の世界で勝利する”というのは、他者と比較して勝つのではなく、
自己実現や、自分の役割を完全に全うするということでしょうか。
後の話では、他のペアを蹴落とすよりも協力していることがほとんどでした。
共にコースの研究をしたり、クラッシュした際などにはマシンの調整を手伝ったりしていました。
一番ぶつかる相手が隣にいるパートナーであるとも。
いずれにせよ本作を象徴する言葉であるのは確かです。
レーシングサイドカーは元々はタイムアタック形式で順位を競うものだと聞きましたが、
軽く検索しても情報が出てきません。レースにはほとんど興味が無いので追求しないことにします。
作品解説
第二話 『Shakedown』 解説 / 感想
第三話 『Practise』 解説 / 感想
第四話 『Swap Meat』 解説 / 感想
第五話 『Reverse Grid』 解説 / 感想
第六話 『Dual Purpose』 解説 / 感想
第七話 『Side by Side』 解説 / 感想
第八話 『Engage』 解説 / 感想
第九話 『Mad Saturday』 解説 / 感想
第十話 『Replay Log Data』 解説 / 感想
第十一話 『Blue Flag』 解説 / 感想
第十二話 『Ladies, Start Your Engines!』 解説 / 感想
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