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彼女と彼女と私の七日 感想/レビュー

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◆序文:
(注意点、心得)


フリーゲームという点を考慮すれば、かつて無い程に素晴らしい。
クリアした瞬間も、実に清々しく晴れ渡った気持ちにさせてくれた。

だが、これで終わりにするならレビューする必要も無くなる為、通常通りに検討していく事にしよう。

百合的に注意すべき点としては、以下のようなものが挙げられる。
“女同士っていうのは普通じゃない”などの表現が数回。女性キャラの一人が所謂ふたなり。
前者は背徳視の要不要に関して、後者は男性の象徴を有している為。

一人で原画とシナリオを担当するのは大したもので、
余程の精神力が無ければ仕上げる事は難しかっただろう。


音楽は優れた水準で質と量を兼ねており、サウンドトラックも販売している。

優秀なスクリプトだが、効果音とエフェクトは過剰な部分が目に付いた。
テキストの語調、背景や演技の質にもバラつきがある。
ただし誤字脱字は一回も無かっただろうか、凄まじい程の集中力である。

時間に余裕があって懐が寒い人には、本作を超える作品は無いだろう。
しかしその反対の場合は、貴重な時間を割く必要は無いと思われる。

テキストに辟易させられる事が多く、精細に検討が加えられず、レビュー精度は低いかも知れない。

「脚本」項にてネタバレあり、ご注意を。



◇攻略:


プレイ時間目安:十五時間


七日目に選択肢が二つあり、そこからエンドが分岐する。



簡易表:


脚本 (what to tell 何を描くか)
物語
C
構成
C



(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)

演出 (how to show どう描くか)

脚本的
B-
作画的
B-
音響的
C+
スクリプト
C+


(音響的演出は適切な範囲内に納めれば、C+ → B)
(スクリプトは適切な範囲内に納めれば、C+ → A-)

(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)


◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


ワンシーンが長く、ストレスコントロールが出来ていないと思われる。
独白も冗漫過ぎて、聞いていてさながらセラピストにでもなった様な気分だった。

表現に関しては、気の利いたテキストにしようとし過ぎて、空回りしている。
主人公の一人漫才というか、自分でボケて自分でツッコミを入れるというのがかなり多い。
こうした過剰さも、本作がコメディ作品というなら一般的に許容範囲内かも知れない。

喩えて言うなら、和食にスナック菓子を振りかけた様な感があるテキスト。
日常的なシーンにおいて特に顕著。しかし独白や真に迫ったシーンにおいては半ば文学的。
“~であるまい”という文学調のあとに、若者言葉が出て来る事が感覚を狂わす。

ヒロインと居る時はハイテンションでやたらと盛り上がる一方、
生い立ちを振り返る独白時においては非常に湿度が高くなる。
後者が稀で無く大体交互に描かれる為、躁鬱気質な感があり見ていて疲労する。

独白部分が余りにも多く、日記や自伝的な趣きを呈している。
私的には自己投影も出来ず、ついて行くのが非常に難しいキャラだった。
それと純潔さを求めている方には、主人公とヒロインどちらも受け入れ難いだろう。


シナリオに話を戻すと、設定を作り込んでいそうな感はかなりあった。
具体的に言えば、魔法の位階、魔の社会受容、オカルトの意義など。

物語としては五日目にしてようやく動き出した感がある。
つまり淫魔の鮮烈な登場からの一連のシーン。絵もここでは商業レベルと言って良い仕上がり。

構成に関して良いものを持っていると思われるが、口を動かすばかりである為、
具体性に乏しい。実際に過去の出来事を直接描いた方が良かったろう。
それと変態的な行為にもいくらか真っ当な理由があった、というのはライトノベル的な趣向を思わせる。

次に主人公の人となりについて。これは全くの私見ではある。

自制出来る様な精神状態で無かったとはいえ、流される様にして、
さしたる取り柄も無い男性と交わったというのはどうなのだろうか。
個人的にはあまり魅力を感じる事の無い主人公だった。

百合的な意味で行為の描写に特筆すべき点は無かったが、
テキスト自体は文学的な語彙をも絡めて、本作に特有の淫靡さを演出していた。

以下は濡れ場や独白以外について。

この作品の文体がイメージ出来る様に、「文章はなるべく切り詰めるべきだ」という一言を、
本作風に変換(翻訳)してみよう。少々意地の悪い試みではあるが。

「文章は長い方が良いかな?短い方が良い?でも短いとちゃんと伝わらないよね。
かといって長過ぎても読む人が困るよね。 どうしよう? どうしよう? いやそんなこともあるまい。
ああ私はこんなことになんで悩んでいるんだ! 確かに大事なことかも知れないけどさ。
でも読む人のことを考えると出来るだけ短い方が良いよね。こう見えて絢子さんは気配り屋さんなのだ」

……水増し界王拳10倍?



◇演技:


同人界隈では有名な方がおられるらしいが、別段印象に残った箇所は無かった。
主人公の声がキツイ。無理して出しているような感があって、萌えダミ声と呼びたい。

録音の質において特に悪い所は無い。



◆演出:
(スクリプト、画面作り)


一言で言えばスクリプトが過剰。だが涙で視界がボヤける演出は良かった。

立ち絵がユラユラ左右に動くのは幽霊キャラ以外は違和感が強い、
何かの遊具にでも乗っているかのよう。

紙芝居の様なワイプも今一つ。(ただしこれは一回しか使われていない)

人物が静止している状態でエフェクトばかりが元気に動き回っていると、
静と動の対比が悪い方に働いてしまう。

涙以外で良かったのは、アイキャッチに手の込んだバリエーションがいくつもあった事。
<立ち絵の切り替え+ため息スクリプト>、<立ち絵の切り替え+ウインク>等が特に良かった。

曲が流れる際に曲名が表示される試みは面白いが、シーンに対する集中力が削がれる。
これは日常シーンのみであれば、使って良いかも知れない。

携帯の会話について助言すると、電話の音声は3000Hzから先を切るのが基本。

過剰なスクリプト演出ではあるが、技術(労力)には十分なものがある為、
これらは僅かの調整で改善出来るだろう。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画
、塗り)


バランスを失している様な箇所はほぼ無し。
絵画に見られるような程良い脂肪の付き具合が、おそらく原画担当の好みなのだろう。

まず目に関して見ると、白目部分が少ない事が挙げられる。塗りも全体的に簡素。
ハイライトの縁に色が無い為、プラスチックのような反射具合を思わせる。

情事における淫魔の個別CGだけは、商業レベルに達していると思われる。



◆音楽:


豊富な曲数でありながら、質も兼ね備えている。
曲数は二十二曲、歌は三曲で計二十五曲。歌の一つは体験版用のエンディング。



◇効果音:


「演出」項でも挙げた通り、スクリプトが過剰。
コメディ作品並みに効果音を盛るものだから、場面や演技が締まらない。

これらは、本作が仮に無声作品であったなら、適切な範囲内だと思われる。



◆背景:


数が余りにも少なく質も高くは無いが、同人一般レベルに達していると思われる。

幽霊の初登場の背景構図、満月の位置が絶妙だった。



◇システム:


テキストの四行表示は少々読み辛い、スタンダードな三行を推奨したい。
Autoタブをクリックしてオートが始まるが、もう一度タブをクリックしても止まらない。
Escキーを押してもゲーム終了出来ないのは少々面倒。

テキストの表示に関して良い面としては、場合によって、
ノベル形式とアドベンチャー形式の二通りを使い分けている事が挙げられる。

コンフィグでTキーを押すとプレイ時間が表示されるのは良い。
こうしたゲームの全てが採用するべき。

その他に関しても商業クオリティに達している。



◆他:


特に無し。



◇結語:


高評価の方が複数おられた為、期待に胸を躍らせていたが、
音楽とシステム以外は思っていた程ではなかった。

しかしフリーゲームである点を考慮すれば、素晴らしい出来栄え。

今後の活躍も期待される。





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