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白衣性恋愛症候群 RE:Therapy 感想/レビュー

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◆序文:
(注意点、心得)


<キラ☆ふわガールズアドベンチャー>を自称しているが、実際は<Killer☆不和>とも言われている。
叱咤の際に現われる半ば剥き出しの感情が、プレイヤーのハートを突き刺す。

とかく小言が多い為、その際は一歩引いた位置から主人公を見守ることが肝要。
しかしこれに対するフォローはある為、その点は安心して良い。

選択肢も難問というより奇問が多い為、ゲーム経験や能力は役に立たない。

医療部分は物語に深く関わっている為、綿密に描かれている。
職業体験ゲームとして見るのも面白いかもしれない。
ここに興味を抱けるかどうかが、本作を良作と見るかの分かれ目となる。

猟奇的な面も多く、衝撃的なバッドエンドやサスペンス的な面がある為、人に勧める際は十分に注意するように。
またバッドエンドは物語の流れが大体手抜き仕様な為、シチュエーションとして楽しむ
こと

以下、「演出」項の後半部に若干、「後記」全般にネタバレあり。



◇攻略:


プレイ時間目安:四十時間


以下を参照


白衣性恋愛症候群 RE:Therapy 攻略



簡易表:


概ねグッドエンドを基準に評価、さゆりの「作画的演出」、やすこの「スクリプト演出」は
個別CGのあるバッドエンドに起因する。詳細は「演出」項にて。


脚本 (what to tell 何を描くか)

  はつみ
さゆり
なぎさ
あみ
やすこ
まゆき
物語
B+
A
B+
C-
D+
D+
構成
B+
A
B+
C-
D D


(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線、起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)


演出 (how to show どう描くか)

  はつみ
さゆり
なぎさ
あみ
やすこ
まゆき
脚本的
A-
A
B+
C
B-
C
作画的
C+
B+ C+
C+ C
C
音響的
C+
C+
C+
B- C+
C
スクリプト
C+
C+ C+
C+
B-
C+


(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)



◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


以下は主要ヒロインの三ルートについて。

構成は非常に丁寧で、看護や私生活の中で少しづつ人物が見えてくる。
終盤における正しい飛躍の為の、丹念で地道な下準備と言える。
設定に基づき巧みに伏線を配し、ミスリードを誘ったりと、繊細に織り込まれている。

主人公とヒロインの直接的な関係は、物語後半に分岐する個別ルートに入るまでは割と薄い。

序盤は人物の展開が済むまでの少々退屈な時間を、医療の興味深さによって見事に埋めている。
(この“人物の展開”とは、将棋やチェスの駒が自由に動ける中盤戦までの動きをイメージして頂きたい)

後日談はどれも、軽めの浮き沈みで揺らして、
最後に浮上させて綺麗に終わらせている、これは様式美と呼ぶべき所。

個別ルートはラブシーンに捻りがあって非常に良かった。ネタバレになる為、詳細は「後記」にて。

シーンの意図を文字に起こしてしまうのは少々惜しかった。
つまり解説を与え過ぎていて、読み手に自力で理解させてくれないという
こと。逆に言えば親切ではある。

個別ルートの後半を除いて、回想シーンの使い方が若干拙劣。
画調はそれに合せたものとなってはいるが、
一分ほど前の事をそのまま繰り返すというのが乱発されていた。
(上記の時間は物語内部の時間では無く、現実のもの)

サスペンス要素が少し効き過ぎて、主人公含め数名が若干病んで見える。
病み描写に関しては「後記」にて後述する。

ゲーム本編内では、概ね主人公の一人称視点に統一されている。

看護については、ライター陣の二足の草鞋の為、
おそらくは別段の取材も必要無しに、作品の素材部分を無二のものとしている。
加えてシナリオ上、看護という行為が精神的なモチーフの役割を正しく果たしている。

以下の三行は、後日に本稿において加筆したものである。

上記についてライターの内一人のブログを拝見した。本職である以上、
知識に誤りがないか調べないといけない為、取材に関しては逆に苦労したとある。
ゲームなら問題無いが、曖昧な知識で医療行為を行う事だけは避けて頂きたいところだ。

現場指向の用語解説は、門外漢の多くの為にシーンのリアリティを妥協する、
といったこと無く描くことに成功している。

グッドエンドは理想的でカタルシスがある。ノーマルエンドは現実的でビター。
個別CGのあるバッドエンドは主に破滅的。そうでないバッドは淡々としているものが多い。
バッド中には衝撃的なものもあるが、それまでの流れ(構成)に注力されてはおらず、
労力の多くはグッドエンドの方に割かれている。

メインライターのポジションが「シナリオ原案」である本作、他作品を担当した際と比べ、
粗が抑えられ筋立ても入念になされているのは、ディレクターによる監修が行き届いていることの証左。

これの詳細は「他」項にて後述する。



◇演技:


本作では様々なドラマがあるので、真に迫った演技が活きている。

少々失礼だがライターの年代を感じる表現を、上手いこと落とし込んで違和感を減らしている。
こういった所にも声優の技量が見て取れる。

棒読み等は当然無い。



◆演出:
(スクリプト、画面作り)


小さな場面の転換に適切にカットを挿入したり、
大きく移る時には、タイトルを様々に読み上げたり等、(こちらは所謂アイキャッチ)
細かい所でもリズム感を大事にし、快く気持ちの切り替えを促してくれる。

バッドエンドの一つ「puppe」中のワイプ(の一種)が、歪な関係を上手く表している。
(ワイプとは、画面の転換に用いられる技法の一つ)
(2015 1/29 追記:「ソルフェージュ」をプレイして、これは別段意図的な演出ではないという事が分かった)

個別ルート中のみ回想に手が加えられていて、テンポが良い。

場所や衣装に人物の内面が感じられる。天候を使った基本的な演出も良い。

部屋にも色々あって、個室、大部屋、汚部屋、意外に整った部屋、
入居時の段ボールも開けられずにいる部屋。どれも皆、人物の内面や状況が感じられる。
(「背景」の項にて挙げなかったのは、部屋を記号として捉えた為)

バッドエンド「Horizont」のラストカット、画面奥の人物が小さく、無力感が良く出ている。
日の出は逆に海に沈む様にも見え、それまでの物語の流れと合わせて、
刹那の幸福と苦しみからの解放が感じ取れる比類無き名シーン。
背後からのロングショットは、それまでほとんどの時間を正面から捉えていた為、
主人公とプレイヤーが袂を分かった様にも感じられる。
(但し、女性の腕力や浮力と云った事に突っ込みを入れるのは野暮というもの)

この点を鑑みて、さゆり編の作画的演出の良さとした。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画
、塗り)


塗りには暖かみがある。
立ち絵の表情も豊富でよく変わるので、見ていて退屈しない。
現実に近い頭身は作風に合っている。

原画が二人の為か、絵柄が統一されていない箇所が見られた。
もう少し私服のバリエーションがあればという所。
資料集のコメントからしても、遠近法的な正しさにはあまり自信が無い様子だった。



◆音楽:


重要なシーンで使われるものとしては、
ピアノソロがメインで透明感のある曲が多い。残響が多く聞き心地が良い。

サントラの方で聴くと、マスタリングに手抜き等は感じられない。
ダイナミックレンジは十分、音場に広がりもある。(測定した訳ではないが、聴感上)

専用曲があるのは良いが、全体の曲数は若干少なく、
各グッドエンディングに専用歌も欲しかった所。予算の都合上、難しいとは思われるが。



◇効果音:


扉を閉める音や携帯の着信音が、その他の効果音と比較して大き過ぎる。
病室の扉は横開きが多いし、本編中の背景においても
横開きの取っ手のみが確認出来る為、「ガチャ、バタン!」より「ガラララ……コン」の方が自然。
(2015/7/14:追記)扉に関しては、後発の「白愛」では後者のタイプになっていた。

「フニッ」、「バシッ!」等の表現的音響は、
前者は可愛らしさが感じられ、後者は爽やかな笑いを誘ってくれた。



◆背景:


痛車、掛け軸、ポスターなど遊び心がある。
様々な表情を見せてくれた海岸が一番印象に残っている。



◇システム:


以下はPC版のインターフェイスついて。

まずは欠点について。
フルスクリーン機能、オートモードの速度調節、ホイール下スクロールが無い。

スクリーンについては、気になる人はグラフィックスカードで、
縦横比固定のスケーリング、解像度を1024×600にするのが手っ取り早い。
パッチを制作された方がおられるので、そちらを頼るのも結構。

用語解説を直ぐに確認出来るのは便利。次の選択肢まで飛べるのもありがたい。



◆他:


個別ルートの選択肢は曖昧な所が多い。
共通ルートをいかに注意深く見た所で、全ルート全問正解には辿り着けない。
筆者は上手いこと解けたのは一人だけ。

一方の答えの部分が、選択後に他方でも含まれていたり、ヒントが他ルートで与えられていたりと、
その時点までの情報と、それなりの言語能力だけでは解決出来ない。
全員分完答し切る者は千人に一人もいないだろう。

乱暴な計算だが、個別ルート中のグッドエンドまでの全35問、
その内8問が通常の理解の外にあるとして、<2分の1>の8乗で256分の1、
残りを正答率9割として、0.9の27乗で約5.8%、併せて約0.0227%で、四千四百人に一人くらい。


さて、シナリオに注目して関連のある人物を一通り見てみよう。
本作の設定と構成、脚本は一人の手で作られた訳ではない事が良く分かる。

シナリオ原案:円まどか氏、佐倉さくら氏
ディレクター:みやざー氏
スクリプター:西川真音氏

西川氏は後述するが、シナリオライターが本業。

上記の方々のこれまでの仕事については分からない。シナリオ関係にのみ着目する。
以下で挙げる資料集とは、『白衣性恋愛症候群 ホワイト・マテリアル』を指す。

 引用と著作権に関しては以下を参照した。
 
http://www.shizuoka-pt.com/wrold/gakujyutukyoku/chosakuken.html
 
http://www.furutani.co.jp/cgi-bin/term.cgi?title=%88%F8%97p


次の引用は本作登場人物の一人、持田はづきについて。

みやざー氏:
“かおりとはづきの髪型の類似は、彼女の意識がかおりの内で生きている
ことの伏線です。甘いホットミルクやピザにシナモンの組み合わせも、
はづきの好み。例の“おまじない”を含め、いくつかの伏線が張ってありますので探してみてください!”
(資料集67ページ)

続けて、堺さゆりについて。

みやざー氏:
“序盤のキツいツンの部分は、後半のデレのスパイスになると考え、あえてそうしました(笑)。”
(資料集72ページ)

さらに続けて、若本まゆきに関して。

円まどか氏:
“みやざーさんの助言やフォローを受けて書き上げていったシナリオです。”
(資料集94ページ)

患者との恋愛について。

みやざー氏:
“さゆりをはじめ、『リセラピー』のあみ、まゆきにもつながってくる、
「患者との恋愛展開」は、キャッチ―な要素として僕から円さんに提案させていただいたものです。
まあ、実際は職業倫理的に……という部分がありますから、初期案にはなかった部分ですね(笑)。”
(資料集99ページ)

戻って、さゆりについて。

みやざー氏:
“さゆりはツンの部分をとにかく尖らせてあります。声を演じる今井麻美さんに
「これ、私、嫌われちゃわないですかね?」と、冗談まじりに聞かれたほどですね。
でも、この尖ったツンがあるからこそ、その後のデレが活きるんだ、
と考えてあえて落差をつけるべく、押していきました。また円さんの最初の構想では、
さゆりは彼女のルートのグッドエンド以外では、どこかで必ず息を引き取ってしまうことになっていました。
非常に残酷な運命を背負っていたんですが、弊社のスタッフなどとも相談の上、
現在の形に調整されているんです。また、バッドエンドは円さんからの提案。
百合作品の伝統ともいえる耽美さを感じさせられるところもあって、採用されています。
ちなみに『リセラピー』のグッドエンド後の後日談では、その対となる希望に満ちたシーンが、
同じ砂浜で展開される、という構成になっているんです。”
(資料集99ページ)

設定等について。

円まどか氏:
“付け加えた要素は、やはりはつみ以外のキャラについて。
またみやざーさんから提案していただいた案なども多く盛り込みました。
癒しの手についての設定も、みやざーさんからの提案ですね。”
(資料集100ページ)

バッドエンドについて。

円まどか氏:
“実は私自身、わりにバッドエンド萌えの属性がありまして(笑)。
最初はなぎさのバッドエンドは存在しなかったんですが……
私が「バッドエンドを入れましょう!」とみやざーさんをせっついたことで
組み込んでいただける形になりました。短いものならということで
許可をもらった時は嬉しかったですね。なぎさのバッドエンドは、
一部のファンから「わんわんお!」と言われていることを知って、
『リセラピー』のやすこのバッドエンドは、もっと過激な首輪の
使い方を提案したのですが、「さすがにそれはヤバイです!」と止められました(笑)”
(資料集101ページ)

名前について。

円まどか氏:
“みやざーさんからの提案もあって、患者さんの名前はいろんな薬品名から採っています。”
(資料集101ページ)

やすこのシナリオについて。

円まどか氏:
“賛否両論がありそうだ、ということは、みやざーさんも事前に心配されていました。
ただ1年以上『白恋』に関わって執筆してきた中で、
私の中で自然にキャラクターが生きて動き出してしまっていたというか……
彼女の生い立ちも自然に設定されてしまっていて、そこを変えることは「キャラ」を壊すことになると
判断したので、そこは無理を言って通させていただきました”
(資料集102ページ)

以下は佐倉さくら氏に関して。

佐倉さくら氏:
“ヒロインたちの日常パートの一部と主にあみちゃん、
なぎさ先輩にかかわるシナリオを担当させていただきました。”
(資料集103ページ)

68・80ページの円氏の発言によって、佐倉氏は上記二名の全てを担当した訳ではない事も伺える。

最後に西川真音氏。

西川氏は類稀なるギャグセンスを持っているという事が判る。本作公式ブログ参照。
(念を押すと、これは文字通りの良い意味で)

シナリオライターが本職ではあるが、
本作ではスクリプト担当であり、円氏が尊敬する方でもある。
専門学校三年時には、学際で二人のみが選ばれる優秀者の一人であった。
四年時からは講師の助手を務めたという。

詳しくは以下を参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B7%9D%E7%9C%9F%E9%9F%B3

本作公式ブログも見ておこう。

http://blog.kogado.com/shirokoi/?p=47#more-47
円まどか氏:
“白恋は医療モノではあるけれども、病院が舞台なだけで、
メインは女の子(子?)同士の友情・成長ストーリー。
医療ばかりに偏ってしまうと、萌えが薄くなってしまうので、
その辺のバランスには気を遣いました。ディレクターさんが。
私は割と好きに書かせてもらって、あとのチェックで泣いたクチです(笑)。”

http://blog.kogado.com/shirokoi/?p=427#more-427
佐倉さくら氏:
“一年前の今頃、2009年末は既に「白衣性恋愛症候群」の開発は
始まっていて、プロットをシナリオの円まどかさんと
あーでもないこーでもないと揉んでいたなあ、なんて思い出されます。”

『百合ヶ浜総合病院 再診断書』の方も目を通そう。

みやざー氏:
“なぎさは「お馬鹿」というのも口癖なのですが、私からすると「馬鹿」という
言葉にいい印象がないので、円さんに「減らして」とお願いした記憶があります。
円さんは気に入ってるようで、隙をみて入れてきましたね(笑)”

以上のもの以外に関する詳細は、各自手元の資料にて確認すること。

一部では癖があるものの、本作が基本的に優れたシナリオであったのは、
こうした様々な協力と助力の上に成り立つという事を忘れてはならない。


次に感情移入について。

資料抜粋:
(百合ヶ浜総合病院 再診断書より)


“――本作を製作するに至った経緯は、どういった流れだったのでしょうか?”

みやざー氏(ディレクター)
“それは、まず前作となる「白衣性恋愛症候群」(以下、白恋)を作る時まで遡りますね。
最初に白恋の規模を会社と相談したんですね、「シナリオがコレくらい、
登場キャラクターがコレくらい、開発期間はコレくらい、予算はコレくらい……」って。
その中で、白恋は舞台が病院ということから、ユーザーの方々は
きっと世界観に「すっと」入ってこれないだろうと考えました。”

“――確かに、いわゆるギャルゲー・百合ゲーによくある「学園モノ」ではないですね。”

みやざー氏:
“そうなんです。そういった「学校」や「学園生活」を題材にしていると、
ユーザーの多くが経験している舞台なので、授業を受けて、休憩時間があって、
お昼休みでご飯を食べて、部活をして……、なんていう流れを説明しなくて済む。
でも、白恋はご存知の通り、「医療モノ」です。病院内で起こることを体験してほしい、
こんな環境で働く女性たちのキリッとした部分や逆に人間臭い部分を知ってほしい、
という思いで選んだ題材なので、病院そのものがどういうものなのかという説明に
時間をかけて、ユーザーの感情移入の度合いに違いを生まないよう、努力しました。
そういったことから、新人の主人公が「怒られてヘコみながらも立ち直る」、
先輩看護師が、正しい・間違っているはともかくの「教育とフォロー」というシーンを、
共通ルートに多く盛り込んだんです。

(以上、26ページより抜粋)


資料抜粋:
(ホワイト・マテリアルより)


“――そういえば「白恋」は、医療の現場をリアルに描いたシーンや用語が随所に登場するのも特徴的ですね。”

みやざー氏:
“病院内の物語である程度リアリティを出すということになると、
やはり専門用語や、その場所ならではのノウハウを説明する必要がありますよね。
そこを曖昧にしてしまうとプレイ中の感覚が薄っぺらいものになってしまいます。
それに、円さんや佐倉さんの経験や個性を活かすなら、ここは必須という部分でもありました
ただ、劇中でそれをいちいち登場人物に説明させるのは煩雑ですから、
そこをすっきりさせるために、用語解説を入れることにしたんです。
見たい人だけ確認できて、気にしない人は、そのままストーリーの先に進んでもらえるという形ですね。”

(以上、98ページより抜粋)




◇結語:


構成の巧みさに加え、声優陣の幅の広い演技、
暖かみのある絵柄に、質の高いピアノ曲。

人物が記号の枠を抜け出し、血が通っていて、息遣いが感じられる。

この作品に出合えて、本当に良かった。



★後記:


以下にもネタバレを含みます、個人的感想の多くは本項にて。

まず、バッドエンドについて補足しておきます。

人間関係において単なる執着によって傍に居続けるというのは、
ある意味で最も残酷であると言えます。
お互いに相手の本当の所を見ていないという事が、選択肢によって示唆されている。
つまり全く正しくバッドエンドで、それ故に破滅的と書きました。

バッドエンド「Horizont」は、仮にグッドエンドの調子で迎えていたら、
文字通りに涙腺決壊した所ですが、そうならずに良かったと思います。
想像しただけで身を切られる思いがした程です。

それと、ラブシーンについて。

シャワーだけでは体しか暖まらないと抱き締めるはつみ。
如何に強く心配していたかが見て取れる、無断欠勤を責めるさゆり。
やすこのペンネームに込めた想い。

これら三つが印象的で、特にシャワーのくだりは実に良く練られている。
シークエンス(一連のシーン)も含めて素晴らしい。

次に、構成についてです。

仕事の部分が多いかも知れませんが、
職務に対する姿勢などがある種の記号となり、各人物の違いを浮き上がらせているので、
これはこれで良く機能していると思われます。
と言っても、医療や看護に興味の少ない方には少々退屈に感じられたかも知れません。

続けて、設定関連です。

“癒しの手”ですが、無くても物語の上で特に困る事は無かったでしょう。
とは言え、『ココロの処方箋、いりませんか?』のキャッチフレーズ通りではある。
つまり、どこか病んで見えるヒロインが、癒しの手によっても癒されたと言えるからです。

それに術後の記憶や趣味趣向の変化に関しても、臓器移植された方の症例から考えて、
脳にだけそうした機能があるとは言い切れないらしい。

物語が余り写実的にならない様にした、
あるいは上述の症例を耳にした事が無い方への配慮とも受け取れる。

さらに続けて、作風に関してです。

選択肢の難しさや、病んで見える描写やサスペンスの要素が混じっているのは、
ディレクターが『ひぐらしのなく頃に』を所謂リスペクトしている為である事が、
資料集や公式サイトでの発言から伺えます。

最後に、人物についてです。

突拍子も無い数々の行動にも、それなりの理由があります。
特に病院というストレスの多い環境ですから、
病気を抱えた患者であっても、治療に携わる側であっても、
多少の奇癖は、精神状態から考えて仕方が無いと見ることは出来ます。

主人公と、ヒロインを一人だけ見てみます。

看護師として人として成長してゆく主人公は、基本的に真っ直ぐな性格でとても魅力的です。

主人公かおりが仕事でミスをする度、当然ではありますが、キツくお灸を据えられます。
すると見ているこちらも叱られた様な気になるので、
彼女となぎさ先輩との、終業後の部屋飲みは救いでした。

物語の後半に入り、様々な事実が詳らかになってもその魅力が失われる事はありません。

高校時代は生徒会長をこなし、卒業後は帝都看護に進学する才媛。
それまでの人生においておよそ挫折を知らない優等生。
しかし看護学校卒業後は一転、都落ちと希望外の内科、そこに親友(以上の想いを抱いた)
かおりが入職して来て、初任給でプレゼントまでしてくるというのに、
あちらこちらとフラグを立てる様を見せつけられて、
二年目の指導力・実力・経験不足に無力さを感じつつ、反面追い上げて来る後輩かおり。
不安定な状況に拍車が掛かった事に招かれ魔が差した。

その上で今度はかおりを残して、本人たっての希望ではあるけれど、
問題のある外科に転属、という翻弄具合。

これだけ続けば頭の中はもう滅茶苦茶になっていて然る所。

と、終始弁明の様な形になりましたが、かおりとなぎさのカップリングが本作で一番好きです。

高校時代の話をビールの肴にして、しれっと「そんな事もありましたね~」と遠い目をするかおり、
そこにツッコミを入れるなぎさ先輩、というやりとりに思わず笑みが零れます。



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