
◆序文:
(注意点、心得)
本編開始直後に、お馴染みの背景と曲。
良く言えば、安心感がある。逆に捉えれば、手抜きぶりに期待感が全く感じられない。
開始数十分の間、同じ曲を使い続けていた。(演出的な意図は見られない)
青文字での反省が見られたのは、以下の二点。
声優の質、効果を中心としたスクリプトの一部。
他には別段の改善は見られなかった。
広報に回す予算のいくらかを、新規の音楽、効果音、背景を追加する事に費やすべきだろう。
シナリオは簡単に言えば、ストロベリーサンデーを食べながら、
合間に青汁やビールを飲むような感じだろうか。無論、その比率はカップルによって異なるが。
どう考えても、「その花」にヤンキーネタを持ち込むのは無理がある。
物語の構成において、不可欠な良性のストレスは少なく、
テキストにおいては、不要な悪性のストレスが満ちている。
個人的な話だが、このライターが今後関わる作品に触れる事は無いだろう。
周囲の助けを借りたとはいえ、「ソルフェージュ」、「白恋」で築いた信用は崩れ去り、
信用を財産と定義するならもはや債務超過に達している。
以下、ネタバレは無し。
◇攻略:
プレイ時間目安:十五時間
以下がお薦め。フローチャートが見易く、全体を瞬時に把握出来る。
http://gteangine.blogspot.jp/2015/06/blog-post.html
プレイする上で大変お世話になりました。この場にて感謝致します。
簡易表:
脚本 (what to tell 何を描くか)
葉月 × 愛実 | 亜弥 × 藍 |
渚 × 莉菜 | |
物語 |
D+ | C- | C- |
構成 |
D+ | C- | C- |
(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線、起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)
演出 (how to show どう描くか)
葉月 × 愛実 | 亜弥 × 藍 | 渚 × 莉菜 | |
脚本的 |
D+ | C- | D+ |
作画的 |
C- | C+ | C- |
音響的 |
D+ | D+ | D+ |
スクリプト |
C- | C- | C- |
(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)
◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)
まず構成について。
さして段階も踏まず、関係が進展する為、構成上これといった見所は無い。
ぽっと出の女子Dさんをヒール役(悪役)に仕立てるのもどうなのだろうか。
ワンシーンが長く、掛け合いがダラダラと続く事が多い。
次にテキストについて。
庶民と金持ちの関係に思う所があるのか、対立図式を持ち込んでばかり。
割とギスギスした雰囲気があり、息が詰まる。また、説教染みた所が多く長い為、かなりくどい。
物語においては基本的に、説教は短くが鉄則であり、言葉を尽くす程その効果が薄れていく。
一部、論理が飛んでいるというか、無理がある。
葉月「っていうか、愛実さんが……あの愛実さんが殴るなんて……」 愛実「殴られるようなこと言うからでしょっ!」 |
ここは殴ったことに対して謝る等して、フォローを入れるべき所。
人物の性格や心情についても口頭で説明してばかり。
ある人物による妄想が大変多い。これはギャグ作品ならば許容範囲内だろう。
妄想も突き抜けた面白さというよりは、痛々しさが上回っている印象。
いたずらに長引かせなかったことは、せめてもの救いだと言える。
続けて人物について。
個人的に、メイドは良いキャラしていると思う。
“「失礼つかまつり!」”とか、変な言葉遣いが妙にツボにはまる。
表現について。
一般的に、百合好きは繊細な感性を持ち合せていると思うのだが、
本作ではかなりキツイ表現が散見される為、読んでて苦しくなるだろう。
昭和テイストに、ネットスラングと口汚さが混ざっていて、混沌としている。
一回ぐらいならまだしも、“マイ天使”という台詞の乱発が、古臭さを醸し出している。
このライターによる以前の作品にも見られたが、“毒”や“土下座”や“クソクラエ”という言葉に愛着があるのだろうか。
ちなみに、“クソクラエ”は三回で、土下座は数回。(葉月 × 愛実)ルートが最も辛辣。
“「唇に毒とか塗ってない?」” “明日、愛実さんに会ったら、まずは土下座かな。” “「このクソ虫が」” (※ これは妄想シーンのものである為、その点は注意) “そうだ、これはアレだ、『よくもうちの子を可愛がってくれたな』って 指をボキボキ鳴らすヤンキー理論のアレだ。” “「不良さん呼んで莉菜に痛い目見せてやろうって計画してたみたいだから、 莉菜の方もフルボッコにさせていただいたわけ」” “顔色を変えず、時には楽しそうに折れた木製バットや 砂入りストッキングを振り回すような人たちと渡り合うには、 わたしではまだ役者不足だ” (※ 役者不足 → 力不足とすべきところ) |
数えるのも億劫(おっくう)だったが、まだまだ他にもあったはずだ。
“デリカシクない”という言葉は、割と現代的な感がある気がする。
誤字脱字は五回程と、少ない方。おそらくは、入力したスクリプターのミスだろう。
英語について。
“Do’nt mind。”ではなく、“Don’t mind.”
これくらいは入力ミスだろうから気にする必要は無い。
ゲームテキストであるから、カンマを句点にする事については問題無いかも知れない。
だが、いやしくも英語教師の台詞として盛り込むなら、
和製英語を使わずに“Never mind.”とするべき所。
ギャグについて。
吹き出すほど笑えたのは以下の一つ。
“愛実「キスの極意は、相手の全てを奪い尽くすように吸うべし!」 「少なくとも、相手の体力を吸い尽くすくらいは狙わないと!」 葉月「えっ、マジで!?」 キスの極意、かぁ……そっかぁ、キスするなら、 そういうことも勉強しておかなきゃいけないのね……。 「相手の体力を吸い尽くすつもりでするのが極意なのね……勉強になったわ」 愛実「んなわけないっしょ、脳味噌動いてんの?」” |
最後にライターについて。
個人的にだが、このシナリオライターがその花シリーズに溶け込むには、
人の生死について盛り込まず、毒舌も全てギャグにしてしまえば、上手く行くと考える。
◇演技:
声優の技量によって、ライターの書いたクセのある表現を緩和している。
当然、青文字で見られたような棒読みは無い。
双子と栗毛の娘は、台詞自体も整っている事が多いのも相まって、かなり可愛らしい。
◆演出:
(スクリプト、画面作り)
まず、音響演出に関して。
愛実に対して、愛実自身が自分らしくいられるなら、どちらでも良い、と言う場面。
見せ場のはずが、音楽が日常系のまま。
屋上で双子が急に登場した直後に、悲しげな曲に切り替えるのは唐突過ぎる。
もう少し段階を踏むべきだろう。
効果に関して。
妄想シーンは、画面周辺にモヤがかかったように見せて、
現実との違いを演出しているが、回想シーンはそのまま。どちらも音声に加工は無い。
シェイク(画面を振る)は複数のパターンがあり、効果音と組み合わせてある。
カットの切り替えが緩やかな事もあり、その分目の疲労は和らいでいる。
特殊なワイプ(画面切り替えの手法の一つ)も見られたが、別段の意図は無いと思われる。
アイキャッチの際に画面を回転させるのは、赤文字系と同じ。
◇作画:
(キャラクターデザイン、原画、塗り)
青文字に比して、赤文字寄りの造形になっている。
涙の色が若干赤く、血涙に見えることがある。
眉毛の位置がかなり高いことがある。やはり耳のデフォルメがキツイ。
顔の影付けが少な過ぎて、のっぺりとしている。
手首と肘関節の影付けは過剰で、人形を思わせる。
横向きの立ち絵、背骨が湾曲し過ぎている。(特に葉月)
双子は別の幼稚園に通っていたにもかかわらず、制服が同じになっている。
◆音楽:
使い回しばかりが目立つ。切り替えもあまり上手くはない。
◇効果音:
“黄色い声”というのが、ガヤ(群衆)による録音ではなく、効果音として収められていて、
これがクリーチャーの鳴き声のようで非常に不自然。
最低限のものは付せられていたが、大体どれも鮮度が低く、
まともなのはドアの開閉、電話、ホイッスルくらいだろうか。
押し倒す際は、“バシッ!”という音がして、まるで叩いているようだ。
◆背景:
これもまた使い回しが多い。
個人の部屋であっても、一部「はなひらっ!」の部屋を流用している。
◇システム:
最低限必要なものは揃っている。
しかし、やはり赤文字フルプライスとは担当が違うのだろう。
バックログは三行だけで読みづらい上、ロードすると消える。
透過調整や人物の個別音量調整も無い。
システム変更時に、“OK”を押さずに戻ると反映されない。
◆他:
以下の枠内は、本作のライターを務めた円まどか氏の言葉である。これは……?
今のメインの取引先の方は「あなたレベルの文章なら、うちの子でも書ける」と お打ち合わせの度におっしゃってくださっていたので、私があの子たちを 書けなくなることは残念ですが、作品の質に関しては心配はしておりません。 引き続き、にゅーじぇね!の子たちを可愛がってくださるようお願い申し上げます。 |
◇結語:
タイトルにある「にゅーじぇね!」の通り、
ファン層にも新陳代謝が必要なのだろう。
老兵は死なず、ただ去るのみである。
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