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ねのかみ 京の都とふたりの姫騎士 前編 感想/レビュー

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◆序文:
(注意点、心得)


シナリオや音楽には特に力が入っている。だが最終的には、後編をプレイしてから判断したい。

本作には前日譚もあり、神話をベースに世界観は緻密に練られている。(と、推測される)
しかし、世界に浸り切れないのは、絵柄の不統一と、背景美術を含めた演出における詰めの甘さにある。

人物に関しても魅力的だと思うが、おばさんやお婆さんが白兵で戦うのはあまり絵にならない。

基本CGは七枚と少なく、それなりに予算が抑えられている為、その点は注意。
(ギャラリーでは六枚であるが、差分扱いで個別CGがもう一枚ある為、実際は七枚存在している)
代わりに音楽にそれを割いたのかも知れない。主題歌あり。
それと、分割作品である事をあらかじめ明言しておかないのは問題だ。

以下、ネタバレは、「他」項における後編予想に関してのみ。



◇攻略:


プレイ時間目安:十二時間


選択肢無し。



簡易表:


以下、特に脚本関連は完結してから考え直したい。

脚本 (what to tell 何を描くか)

物語
C
構成
C


(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)


演出 (how to show どう描くか)

脚本的
B-
作画的
C
音響的
C
スクリプト
C


(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)




◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


未完結である為、そこは考慮する必要がある。

まずは、構成について。

感情移入のしやすい巻き込まれ型の主人公。

冒頭で一定の着地点を見せ、大きく読み手を惹き付けた後は、丁寧に段階を踏んで進む為、
導入が丁寧で、二章を終えた頃には物語設定と人物にすっかり馴染む事が出来た。

初めの内は、主人公の過去ばかり聞かされた為、プレイヤーの容れ物になるタイプではないように思えた。
しかしこれは序盤のみであり、また、些細な思い出話に過ぎない為、以降は気にならなかった。
(序盤から、いわゆるトラウマに頻繁に触れると、主人公は読者の手から離れてしまう)

伏線を張るというよりは、前振りという感じで、
言い間違いや冗談の様にして流す事が多い。(“剣”や“神域”、“力の使い方”など)

“転章”というものを設け、もう一人の主人公視点で物語を振り返る事になる。
これで最後に、二つの物語がぶつかり合う形で、前編は終わりを迎える。
引きが強い展開な為、ほとんどのプレイヤーは後編を買わざるを得ないだろう。(良い意味で)

続けて、恋愛的な面での構成について。

個人的にだが、段取りが若干不足気味。また、描写や表現も含めると、
行為を見ていても胸の奥が満たされるというよりは、へその下が疼いてくる感じだろうか。
とはいえ、二組目のカップルのキスだけは間違いなく前者の側。

また、日常パートがそれぞれの間に挟まれる為、
いくらか気持ちの整理を付ける余裕があり、人物に対して親近感も湧くようになっている。

次に、脚本について。

ヒロインは“神域”から出られないとはいえ、屋外に出る事は出来るし、
重要な話(真実)を告白する際には、もう少しロケーション(というか画作り)を考える必要があるように思えた。
しかし、優れた商業作品であっても、ルートによっては大して練られていない為、
そこまで気にする必要は無いかも知れない。

それと、ギャグについて。特に笑える所を抜粋しておく。

(ナンパ目的かと勘違いしての一幕)

???「ハハハ、まさか。ボクはアッチ(車)にしか興味は無いよ」

アッチって指で示した方向には恰幅のイイ男性、未婚36歳の松永さんが。

東雲「えっ!? ……いや、あの……そうです、よね。いろいろありますよね」

???「あれをね、自分好みにイジリたくるんだ。
俺色に染めてるって感じがたまらないね」

初対面なのに何言ってるのこの人。

東雲「いや、それ以上聞きたくないです。 これでも乙女なので。
それと絵面が厳しいです」

???「まだそういうのが分からないお年頃かな。 っと、ボクは土御門。
伊勢部から派遣されたんだ。危ない人じゃないから安心してね」

どう聞いても安心できないし、危ない人にしか見えない。


誤字脱字はおそらく一回あったかどうかという所。シナリオの分量に比して、極めて少ない。

最後に表現について。

実に些細な事だが、“夕方の3時”というのは少々珍しい言い回しだと思われる。
書き言葉において、“スマフォ”と“スマホ”の表現は統一したい所。
書き言葉では“スマフォ”で、話し言葉としては“スマホ”を使うのがスマートだろう。

次に、“旦那様”発言に食ってかかる者もいるかもしれないが、
この程度は何ら問題ではないと筆者は考える。
確かに異性愛的な趣きを感じさせるが、それもまた広義の百合に含めるべきだろう。



◇演技:


主要人物のみがフルボイスとなっている。

キャラを演出する為と思われるもの以外では、棒読みも無く。特に問題は無い。
バトルものを演るには声量が足りないような感はあるものの、これは商業作品でも見られる範囲内。

主人公が“主様”を“あるじさま”と言い、狐娘が“ぬしさま”と呼ぶのは、
おそらくは単純な読み間違いだと思われる。別の呼び方をする理由が見当たらない為。


主人公の発音が標準語と所々違う事があるが、
人物を演出しているのか、素で読み方を間違っているのか判らない。
多分だが、前者だと思われる。その根拠は、主人公が村人と違って垢抜けている為。
(追記:2015/10/13 他作品をプレイ後、これは声優の癖だと判明)

貴重なょぅι゛ょ……じゃなくて、佐奈ちゃんのボイスが無いのは少し残念。
貴重というのはあくまで村に若者が少ないという意味で
決してそれ以上の何かがあるわけではなくて
健全な意味で可愛がらねばならない
ょぅι゛ょである佐奈ちゃんを
健全な意味で可愛がりたいという事であって――(以下略)




◆演出:
(スクリプト、画面作り)


カットインで用いたAfter Effects(簡易的な動画)の使い方は効果的。
二秒程度までであれば、違和感が少なく感じられる。
(こうした動画処理は、特に影が正しく動かない為、どうしても不自然さが残る)

画面作りにおいては、背景が一部実写に近く、統一感に欠ける。
まるで世界観の演出に貢献してはいない。

行為時において、両者の心理描写を並行して行うのは客観視的であり、
主人公に対する感情移入という点では効果は薄い。
両者に対して同時に充分に感情移入出来るかというと、個人的にはそこまで器用には出来ない。

音響的な面では、テレビの音声が少し電話の様に聴こえる。
(テレビ用のフルレンジスピーカーでも、もう少し高域がクリアなのが普通)

“土蜘蛛”が現れる場面は、能や歌舞伎における掛け声が異様な雰囲気を演出している。
(蜘蛛といっても虫の方ではなく、民族の蔑称である為、苦手な方は安心して頂きたい)

攻撃時のエフェクトは中々に格好良いと思う。
方向や力加減に合せて、更に複数種類用意できれば尚の事良い。

アイキャッチやワイプ等も、演出的な意図は見られないが、最低限のものは付せられている。
加えて、立ち絵を動かす事もあれば、画面を振る事(シェイク)もある。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画、
塗り)


基本CG数が七枚。差分は七十九枚。
(ギャラリーからだと基本は六枚だが、その内の一枚は別のカットを含む)

以下、差分の何枚目であるかは割愛する。時間があれば追記したい。

個別CGの半分程は違和感が無いが、主要人物四人の頭蓋骨が上に長い。
主人公の耳の位置が、CG毎に違い過ぎる。
“CG鑑賞”において、個別CGの四枚目(左下)は耳が下方に位置している。
五枚目(中央下)は逆に上方に。タイトル画面においては下方にある。

視線に関してもかなり不自然だ。個別CGの二枚においてだけだが。
“CG鑑賞”における、一枚目(左上)はお菓子やアイスを食べさせ合う際において、
視線が相手の口や食べ物から外れている。
四枚目(左下)は、プレイヤーにヒロインの顔を見せる為か、
三十度程、顔の向きが両者を結ぶ軸上から右側に傾いてしまっている。

骨折している箇所も見られる。五枚目(中央下)はヒロインの左足が完全に折れている。
これは爪先(つまさき)を見れば解かる。
主人公の右足は、もっと画面手前になければおかしい。一体どこから生えているのだろうか。

髪のハイライトの入れ方には少々癖がある。ハイライト自体は自然だが、
ハイライト周辺部が、逆に色が濃くなっている。この範囲なら光を受けて色が飛んでいる筈。
しかし、この辺りは少し調べてみる必要があるかもしれない。
(筆者はこうした点をあまり意識して見た事が無い為)

横顔のデフォルメは綺麗な凹凸をしている。特にCG三枚目(右上)。
キスに関しても、気持ちが込められていると思う。同じく三枚目。
肉付きや脂肪の表現はかなり上手くこだわりを感じる。特にCG五枚目(中央下)。
笑い方も人物毎に表情に個性があって良い。同じく五枚目。
デフォルメされたジト目も可愛らしい。CG一枚目(左上)

短所を克服して、長所を伸ばしていって頂きたい。

複数人でキャラを分担していて、絵柄と頭身と塗りの不統一が極めて大きい。
背景も含めると、いよいよもってそれが目に付く。

一つの世界観に、背景の絵柄が二つ、人物の絵柄が五つ。
一度に三人までが立ち絵で現れるとして、(背景の絵柄2通り×人物の絵柄25通り) → 50通り
単純に考えてこれだけの世界が生じてしまう。2C1×(5C1+5C2+5C3) → 50

これによって、作品世界に没入する事が難しくなっている。
基本的に、一つの作品には一つの絵柄が鉄則。(ただし、予算を考慮すれば仕方の無い事)



◆音楽:


メインの曲はかなり良い。待ち受けている運命を予感させる。
バトル用にアレンジされたものには疾走感がある。どの曲も全体的に質は高いと思う。

上記のどちらも主題歌が基本となっている。編曲によって違いを出すのは、統一感を出す上で効果的。



◇効果音:


鮮度が低く、鈍い音が多い。
付せられる回数自体多くなく、少々だが臨場感に欠ける。



◆背景:


端的に言って、商業クオリティには遠く及ばない。
外の風景はおそらく写真に加工を施しているだけ。



◇システム:


個別音量調整や透過調整を含め、必要最低限以上のものを備えている。
問題が発生するようなら、制作者に直接連絡すること。

“用語辞典は”僅か十六語のみ。これならば“用語メモ”か“用語ノート”くらいが妥当だろうか。
目当ての語句を調べるまで、最低三クリックが必要。最大でも四クリック。
回数は少々多いかもしれないが、用語の数自体が少ない為、問題ではない。

XP故か、半自作PC故かは判らないが、筆者のPCだと
十秒ほど動作が停止する事が二百回以上あり、非常に難儀した。
とはいえ、XPは動作保証外である為、作り手に非は無い。

後日、パッチを充てる事で修正されるか試してみる予定。
(土蜘蛛の台詞やテレビのナレーションで特に頻発した)



◆他:


後編予想。予想と言っても、全然考察していない為、全くの当てずっぽう。
思うままに書き出してみたものの、流石に殲滅はあり得ないだろうとは思うけれど。

予想一/本命, 主人公は寝返った振りをしていて、一人で全てを終わらせる気でいる
         (あやかしの信用を得て、内部から食い破る。敵方の頭だけを潰す)
予想二/対抗,
主人公は寝返った振りをしていて、講和の為に動いている。領土の割譲等を条件に
         (相手の真の狙いを知り、対話への道を切り開く)
予想三/単穴,
主人公は寝返った振りをしていて、仲間を鍛えようとしている。あやかしは殲滅
         (力づくで平和を勝ち取る為に)

予想四/連下, ヒロインの処○を奪って、封じの力を無くす。以降は講和あるいはどちらかの殲滅
         (本命等と同じく、ある点で偽悪者を演じる)
予想五/大穴,
主人公は普通に裏切り、狐娘と幸福に暮らす。あやかしによる顕世の掌握
予想六/超大穴, 世界の消滅
         (この世界が初めから存在していなければ……という負の精神の極地)



◇結語:


欠点は多いが美点も多く、少なくとも百合同人ゲーム界において、
今後最も期待が出来る作品だと、筆者は考えている。
後編は次の冬以降だそうだが、可能な限りブラッシュアップして世に出して頂きたい所。

この作品世界をこれからも大事にして行き、技量が最高度に達した所で、
過去作を含めリメイクをしての商業デビューを期待する。
必ずしも商業が良い訳ではないが、予算とそれに伴う人材と人手が不足している感は否めない。
何よりもまずは、実写の単純な加工で済ましている背景分を、外注に委託する事からだろうか。

五年後十年後も見据えて、百合ゲーム界を盛り上げて頂きたい。

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