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カタハネ 感想/レビュー

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◆序文:
(注意点、心得)


まず始めに、本作において大きな欠点は存在しない。

強いて言うならシロハネ編での日常的なシーンは退屈という声が散見された。
それと、シロハネ編にクロハネ編が挿入される形になる為、繋がりが良くないという意見も見られた。

レビューを執筆後に内容に何らかの漏れが無いか、
ErogameScapeにおける800文字以上のレビュー全てに目を通した。
そこがこれらの意見の出所であり、筆者自身も概ね同意する所である。

百合的な面において考慮すべきは、男女の絡みが存在するということ。
もちろん百合カップルに割り込んでくる事は無い為、その点は安心出来る。

群像劇の欠点は、視点がぶれて絶対的な感情移入度が小さくなることで、
明確な主人公が不在になりがちであり、時系列の認識が狂い易くなる
こと
利点は、多くの人物において、直接に心情を言葉にしてしまえる
こと

個人的には百合自体より、アインとデュアを中心としたクロハネ編の物語に価値があると考える。

クロハネ編は、その隅々まで行き届いた構成、脚本、演出、音楽において、
癖や灰汁(あく)が無く、およそ万人に対して価値ある作品となっている。

ネタバレは「脚本」、「後記」の項のみ。



◇攻略:


プレイ時間目安:三十時間

以下を参照の
こと。注意事項が付せられており、実に分かり易い。
http://desertrain.sakura.ne.jp/kouryaku/2007/tarte_katahane.html

大変お世話になりました、この場にて感謝する次第です。



簡易表:


クロハネ編は、Secret Storyを併せての評価。
シロハネ編は、ココルートにおいて最も百合度が高い。

脚本 (what to tell 何を描くか)


ワカバ
アン
ココ
クロハネ
物語
C
C
B-
A
構成
C
C
B-
A


(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)


演出 (how to show どう描くか)


ワカバ
アン
ココ
クロハネ
脚本的
C
C
B
A+
作画的
B
B
B
A
音響的
B
B
B
A-
スクリプト
B-
B-
B-
B


(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)




◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


まずはファーストシーン。
印象的な台詞で疑問を抱かせて、読み手を物語に参加させている。
(ゲーム開始後から四時間程度で、これに対する答えは与えられる)

ワンシーンは若干長い。
しかし掛け合いの人数と曲の豊富さによって、それに相応しい密度となっている。
三人以上での会話が多く、単調さが生じにくくなっている。

ギャグも面白いものが多い。互いの言葉足らずから生じる事が多く、
それと知らずに愛の告白みたいになっていたり、百合的にも非常に楽しませてくれた。

シロハネ編のココルートでは、アンとベルの百合度は最も高いものになっている。

以下は主にクロハネ編について。

無駄なシーンというものが無い。適切な伏線の配置、程良いミスリード、起伏の数と大きさ、
どれもが高いレベルにあると言って差し支えない。

地政学的な説明が与えられ、世界観が分かりやすい。
つまり領土や資源、技術等によって各国のパワーバランスが示されている。

陰謀渦巻く政治劇があり、そこに対置された、
姫と人形(シスター)の暖かな触れ合い、臣下の忠義と親愛。
これらの対比が物語としての幅を生み出している。

小道具の使い方が見事。シロハネ編中盤での貴石の使用が、
その後のクロハネ全編、残りのシロハネ編における伏線となっていた。

ラブシーンも洗練されている、個人的な感想になる為、「後記」にて後述する。

若干ステレオタイプなキャラもみられるが、敵役も含めて魅力的な人物が多い。

愚者であっても人間的でどこか憎めない。その代表であるユッシなどには、
独白によって人形への恐怖心を見せた頃から、若干ではあるが感情移入してしまった。

奸雄(かんゆう)ヴァレリーの存在は、二人の英雄の存在をこの上なく際立たせた。

誤字脱字は両編あわせて十五回程で、文章量に比して少ない。

クロハネ編におけるシナリオ全体としては、
難しい題材を扱う為の、技量と取材力(知識)を併せ持った素晴らしい筆力。

原案を原画家が担当するという珍しい構造、それを物語のカタチにしたライターやディレクター。
誰がどの程度まで関わっているのかは未知数だが、
文章力そのものは別作品と併せて考えるに、ライターのものだろう。

名作と名高いクロハネ編を、佳作であるシロハネ編で挟んだ構造。
お互いの繋がりというより、クロハネ編の下準備の為に、シロハネ編を利用した様に思える。
(悲劇で終わらせない為、というのも分かるが)

百合部分はシーンとしては洗練されている。
だが全体の構成としては貴石の設定に頼り過ぎていると考える。

私感だが、クロハネ編では二人は自身の運命に対して半ば受け身で悲劇的に終わる。
シロハネ編では特に大きな障害になるものが無く、盛り上がりに欠ける。
但しココルートだけはクロハネ編と強く関わっている為、それなりに高揚する事もあった。

しかし、乱世のクロハネ編があったからこそ、
シロハネ編の平和が掛け替えの無いものに思える事は確かだ。
また、決して悲劇ではなく、その真実においてはハッピーエンドだったと言える。
エンディングの歌詞において、その様に歌われている。



◇演技:


両編に渡ってとしては、なんと言ってもココの可愛さに尽きる。

特にクロハネ編において、デフォルメ調のキャラ以外は、
表現が大袈裟になり過ぎず、決意や気迫に強い意志を感じた。



◆演出:
(スクリプト、画面作り)


本作は群像劇であり、一人称ではあるが視点がよく変わる。
その時々の主役に変わる度、カットイン(アイキャッチ)が挿入される。

この時、ローマ字で人物名が表示され、鐘の音が鳴り響く。
これによって気持ちの切り替えを促してくれる。

天候を使った基本的かつ効果的な演出も、クロハネ編では目立っていた。
雷光で影を大きく見せる演出にも、それを見た者の恐怖心が上手く反映されていた。

洋画の字幕に見られるような字体も、舞台が西洋風な本作に合っている。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画、塗り)


線は若干少ない。しかしシナリオの分量が三十時間程度とそれなりに多く、
それに見合っただけの枚数を描く為には妥当であったと思われる。

キャラ毎に頭身は固定されているが、低めの人物から高めの人物まで様々に同居している。
デフォルメ調の人物と、そうでないのが同時に描かれているという
こと

違和感を覚えた箇所は特に無かった。



◆音楽:


クロハネ編でのバロック風の音楽が特に良く、
背景や衣装と併せて、西洋風の雰囲気を印象付けた。

曲数が多いにもかかわらず、質を落としていないのは素晴らしい。



◇効果音:


特筆すべき点は無いが、「演出」の項に書いた通り、
視点変更(主役交代)の度に鐘の音が鳴らす心遣いはありがたい。

雷と剣戟の音が特に印象に残った、それとココの足音が大変可愛らしい。

パッチを当てても修正されないバグがあり、雨の音が晴れのシーンでも流れる。



◆背景:


特にクロハネ編においては非常に緻密で、現在の基準においても最高のもの。
シロハネ編では若干チープに見える様な所もあるが、
クロハネ編は一貫して質が高く、質感が良い意味で写実的。



◇システム:


何らの不備も無い、およそ必要なものは揃っている。
人物ごとに音量を調整出来れば、なお良かっただろう。



◆他:


 ワカバ、アンルートにおけるシナリオ差は少ない。
 その違いは、いくつかのシーンを差し替える程度。

 テキストと絵の領域が、完全に分離している構造。
 CGのサイズが小さくなるのは難点だが、文字を追うのが非常に楽。
 加えて、作画コストの削減にもなっていると思われる。(背景を中心に)



◇結語:


クロハネ編での隅々まで行き渡ったシナリオ構成、
クラシック音楽を意識した荘重優美な楽曲群。質感の伴った背景、ヨーロッパ風の世界観。

どれを取っても申し分無い。

シロハネ編は牧歌的で微笑ましく、人物の成長や、掛け合いの面白さが印象的だった。

しかし、クロハネ編が挿入される構成上、盛り上がり始めていた気持ちが冷めてしまっていた。
つまり、鉄は熱い内に、という通り。

当初は百合にばかり期待していたが、
アインとデュアに涙腺決壊させられる事がほとんど全てだったと言える。

プレイ前から余りに高くの名声を耳にしていた為、
期待に対するハードルは極めて高かったが、本作は確かにそれに応えるものだった。



★後記:


百合的な面における最も印象的なシーンは、何と言っても“夢”の中のキス。
シナリオ上クライマックスではない為、音楽はそれほど雰囲気は
出ていなかったと思うが、一つ一つの演技に耳を奪われた。

プレミア価格だったが、なんとかサントラも入手。



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