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FLOWERS 夏篇 感想/レビュー

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急いでプレイした為、本稿のレビュー精度は低い。
だがミステリィ関係の問題点だけは読む価値があるだろう

追記:16/8/27 ミステリィに関して挙げた、事後情報を一ヶ所修正
追記:16/9/3               〃


◆序文:
(注意点、心得)


相変わらずの残念なミステリィ、問題点は「他」項にて軽く挙げておこう。

前作に比して、不可解な選択肢の数はだいぶ減っていた。
だが選択肢というゲーム性が持つ機能、感情移入を促進する役割を未だ十分に果たしてはいない。


前作同様、推理パートで主人公が独走し、プレイヤーの手を離れる為、
主人公に対する自己投影という観点からは完全に破綻している。

しかし、新規の背景や向上したシステム等、前向きな点もいくつか見られた。
言うまでもなく、前作から絵や音楽が高品質であるのは確かだ。
加えて、春篇の第五章で見られたような、シナリオ上の崩壊も無い。

全体として、基本的な方向性は前作と変わらない。


以下、「脚本」と「他」項にてネタバレあり。



◇攻略:


プレイ時間目安:十八時間


以下を参照の事。見易さの点で群を抜いている。


http://seiya-saiga.com/game/innocentgrey/flowers2.html

本作をプレイするに当たり、大変お世話になりました。この場にてお礼申し上げます。



簡易表:


脚本 (what to tell 何を描くか)

  千鳥
ダリア
物語
B C
構成
B-
C


(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)


演出 (how to show どう描くか)

  千鳥 ダリア
脚本的
B B-
作画的
A B+
音響的
B+ B-
スクリプト
A B-


(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)




◆脚本:
(シナリオ、構成、テキスト、表現)


まずは構成について。

前作に比して、シナリオ構成に単調さが目立った。
また、前作主人公の物語を回収する為、シナリオの分量が三割近く捧げられていた。
加えて、ヴァイオリンと食事の細かい描写にテキストが割かれた為、
物語(千鳥とえりかの)としては間隙が多かったと言える。

“約束”の話の後で、千鳥が以下のように言うくだりが、シナリオ上の唯一の伏線だっただろうか。
“そういうところもあの子に……”

独白にて千鳥の核心が明らかになる為、特に驚きも何も無く、ドラマに欠ける。

ミステリィとしては、苺のくしゃみが、うさぎのそれの前振りになっていた。
劇場名の“聖ヨゼフ”は油絵の方の下準備だろうか。

小道具としては、千鳥の“自分ノート”が挙げられる。
一見冷たい印象を与えていても、えりかの事を想っていたのが解かる。
二週目をプレイする事で、同じシーンをもう一度新しい観点から眺められる。

トゥルーエンドを迎えた後、蘇芳視点を外伝の様な形で見る事が出来る。

次に脚本について。

推理を行う動機と目的が、ある種の記号となり、各主人公の違いを浮き彫りにしていた。

ダリアが気絶した振りに関して、その後の描写が著しく抜け落ちている。
第五章で十分な推理を行う為の要素として、この点を見逃す訳には行かない。

引用やおとぎ話が、悪い意味で描写を記号化している。
人物の気持ちや置かれた状況を、別作品の名言やあらすじで説明するのは陳腐だ。

設定について。

バレエの監修に一名、脚本と演出のサボートに一名、
新規と思われるスタッフの方が居られた。(エンドクレジットより確認)

当初、ライターの取材にかなりの努力が見受けられ、その姿勢には感銘を受けたのだが、
どうやら別スタッフの仕事だったらしい。無論、頼り切りではないだろうけれど。
(取材とは、物語を描くために必要な情報の収集と適度な理解)

バレエの用語や着眼点は正しくとも、シナリオ構成との擦り合わせが不十分。
終盤に新規の用語を詰め込み過ぎている。そうした用語を突然出されても、
状況が判らず、クライマックスである発表会での緊張感がさして伝わって来なかった。


人物について。

序盤のえりかは他人をやたらと品定めする。見知った人に対してまでその外見を評する。
しかし、これは新規のプレイヤーに対する導入と、えりか視点で人物を捉え直す事の
二つの意義がある為、これはこれで機能している。いくらか不自然ではあるが。

相手の協力がほぼ無い状態でのお姫様抱っこ、演出が無いと少々無理がある。
大した膂力(筋力)だ。サラダばかり食べている千鳥のどこにそんな力があるのだろう。
何か、筆者の知らぬ身体操法の秘儀があるのだろうか。

林檎の以下の台詞、どの口が言うのかと。無論、苺が言うよりは良いとして。
“この学院の生徒でそんな悪さをする生徒はいないですよ”
“そんな”の意味が、様態か程度かで意味が異なるけれど。


テキストについて。

“肩にスルスルと音を立てるように滑っているのが見て取れた”
“見て取る”という表現は少々過剰だ、ここで“見破る”という程の意味は無い。

以下の順で食べる事を“三角食べ”と言っていたが、
むしろここでは“四角食べ”と呼称すべきだろう。

パン→ベーコン
↑       ↓
サラダ←スクランブルエッグ

人物を記号化する事が多かった、だがこれは短編作向きの手法と思われる。
(短時間で人物を印象付ける為)

三回以上使われた表現を拾っておこう。

・ネリー → ダックスフント(細やかな走り方)
・譲葉 → 銀糸の髪、躁気質
・千鳥 → 白桃の匂い、苛立つ事に苛立つ目
・ダリア → 人好きのする笑顔
・えりか → 猫の笑み

文体も記号化されていた。

“~だと、――したのである……”

という形式が十回以上使われていた。こうした事の是非は問わない、些細な事である為。

ギャグのクオリティは大分低くなっていた。
共食いの鉄板ネタにはクスリとくるし、えりかの斜に構えた回答もいくらかは笑えたけれど。
選択肢で笑いを取りに来る姿勢も悪くはない、シナリオ重視の作品でなければだが。
“合掌部。仏教徒を集めた部だ”など。

スレンダーな身体つきを、“大草原”に喩えていたのだが、
“平原”の方が字面からして相応しいだろう。“草”という文字に別の個所を想像し兼ねない。

相手の触れて欲しくない事柄に触れ、怒らせた後での一文、
“荒々しく締められたドアを眺め、わたしは味のしないパスタを口にした。”
これは気が利いている。簡素で解かり易く事の本質を突いている。良い婉曲表現だ。

お嬢様抱っこをされながら、自分の汗の臭いを気にするのは少女らしくて好い。

拐かす(かどわかす)等、前作同様に難読漢字が見られたが、
読み仮名を振る事も増え、そこそこ読み易くなっていた。誤字や脱字はほぼ皆無。

<クレタ人のパラドックス>の下り、定義や前提が曖昧だ。厳密に言えば、
無様相不定肯定命題で語られている限り、必ずしも矛盾に至る訳ではない。
ここは学問の場ではない為、これ以上追求はしないが、循環証明などについて各自調べておく事。

こうした知識の表面的理解は、中学生程度の年齢における理解度を演出しているといった可能性もある。
しかしミステリィにおけるライターの能力からして、そうした狙いを見出すのは絶望的だ。
(追記:2017/10/12 秋編以降を鑑みると、能力の高さは十分に感じ取れる)



◇演技:


虚を突かれたえりかの震え声が特に良かった。

他は後日に検討したい。



◆演出:
(スクリプト、画面作り)


立ち絵において、目を潤ませたり瞬きする事があった。程良い塩梅でストレスが無い。
仮に常時これを行うと、静と動の対比が悪い方に働くおそれがある為。



◇作画:
(キャラクターデザイン、原画、
塗り)


個別CG枚数四十五枚、クオリティを落としていないのが素晴らしい。
手間の掛かっていそうな塗りは何度見ても飽きないだろう。

バランスを失しているような箇所は一枚たりとて無かった。

唯一の欠点は、お姫様抱っこされた時のえりかの表情が、相手によらず同じであった事。
折角お姫様抱っこを記号にして、相手に対するえりかの気持ちを、
表情や所作の違いで表す事が出来る機会だったというのに。

誰に抱かれても同じ顔をするのは、異なる相手を同一視しているようで不自然だ。

脚本との擦り合わせについて。

“日本人では考えられないほどの真白い肌”という表現があったが、そう言ったえりかも十分に白い。
しかし、この程度の乖離(文と絵の違い)は一般的に見られる為、問題ではない。



◆音楽:


メインの曲は港町を思わせる曲調で、特にアコーディオンがそれを際立たせていた。

前作同様に高い品質を維持している。

サントラを購入後に追記するかも知れない。



◇効果音:


前作に比してそれ程目立っていなかったのは、調理の回数が少ないからか。
しかし、特にお茶会での食器に存在感が無かったと思う。
事件も春篇ほど派手なものが無い事も関わっているだろう。



◆背景:


枚数を増やし、作品世界に拡がりを見せた。
とうもろこし畑、うさぎ小屋、美術室、湖、地下劇場など。



◇システム:


前作より若干の向上が見られた。一つ前の選択肢に戻る機能など。



◆他:


プレイヤーに与えられる事後情報をリストアップした。

無論、必ずしも全てを事前に開示する必要はないが、
プレイヤー側で推理可能な程度には明らかにしておくべきだ。

第一章

・千鳥が干し草を小屋の中に持って行くのを、クラスメイトが真似していた事 → 事前情報
・干し草が湿ると、うさぎの食いつきが悪くなる事
・食べ残しの干し草を、小屋の隣で日干ししていた事
・千鳥の視力が低い事
・うさぎのくしゃみが、“パスツレラ”という細菌に因る感染症の兆候である事
・音の出るテディベア(グロウラー機能)が存在する事
・テディベアがダリアの趣味である事

第三章

・学園に地下が存在する事
・地下に劇場が存在する事
・劇場に人の名前を付ける習慣が異国には存在する事
・劇場の名前が“聖ヨゼフ”である事
ネリーいわく、“↓”が地下を表す記号である事

第五章

・学院指定のレインコートが存在する事
・レインコートの色が黒である事
・外灯や心理状態によっては、黒が碧色に視える事
・<枝打ち用の金属棒のような物>が存在する事
・絵
(マユリのを含む)が廃棄されるのを、蘇芳が知っているという事
・美術室に部外者は立ち入り禁止である事



◇結語:


特に言う事は無い。

残り二作で蘇芳の物語がどう落ち着くのか、それだけが気になる。

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