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その花びらにくちづけを 「天使のあこがれ」「天使たちの春恋」「天使たちの約束」 感想/レビュー

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序文:
(
注意点、心得)


十年近い歳月も、人によっては特に成長も無く変わらないままという事が解かる。

青文字シリーズは『白衣性恋愛症候群』に倣って(ならって)、脚本や演出に関し、
赤文字シリーズと一線を画すものであるだろうと期待していたが、全くの見込み違いであった。

作画においてはデフォルメバランスにバラつきがあり、
修正が必要な箇所はいくらか見られるものの、基礎的な面で不安を感じさせる事はそれほど無かった。
加えて確かな向上心が見え、今後の成長に期待が持てる立派な絵描きである。

しかし旧来の「その花」ファンにとっては、あまりに急進的な改革であり、
保守派の反発は避け得ぬことであるだろう。
また画集にするにしてもその水準には達していないと思われる。

赤文字では、少なくともぺこ氏による画集としての価値は揺るぎない。

しかし今作ではそれが無い為、称賛すべき箇所はほとんど見当たらなかった。
相変わらず脚本、演出、音楽、背景、システムはプロの水準に達していない。
あろう事か、演技においては半数以上が素人同然の有り様であり、
赤文字シリーズにあった愛嬌はほとんど見当たらない。

こうした問題点は余りに多く、逐一数え上げるのも億劫(おっくう)になる程だったが、
本作の今後の為、詳細な検討を行った次第である。

百合でありさえすれば、内容は一切問わない、という方にはお薦め出来る。

ライターが同じ為、
『白衣性恋愛症候群』と一部比較。
同じと書いたが、役職が“シナリオ原案”である「白恋」と、
“シナリオ”である本作では、監修の度合いが全く違うのでそこに留意。

具体的には、以下を参照して頂きたい。
白衣性恋愛症候群 RE:Therapy 感想 (詳細レビュー)

以下「脚本」及び「演出」項にてネタバレあり、ご注意を。(名前は伏せてある)



◇攻略:


プレイ時間目安:十二時間


あこがれ

 一, 上がる
 二, ドアを開ける
 三, 頷く
 四, うん、あったよ!


春恋

 一, 言っちゃう!
 二, 皐を起こす
 三, 一緒に行く
 四, ちゃんと説明する


約束

 一, 構う
 二, 晶の様子を見に行く
 三, 訊く
 四, 話す



簡易表:


脚本 (what to tell 何を描くか)

  あこがれ 春恋 約束
物語
D+ D+ C-
構成
D+
D+ D


(※一.物語とは、世界の変革、個人の心境変化、それらの変化量。描出すべき事象の過不足の無さ)
(※二.構成とは、物語を描く為の適切な場面の配置、伏線起伏、溜め、ミスリード、小道具の使用等)


演出 (how to show どう描くか)

  あこがれ 春恋 約束
脚本的
D+ D+ C-
作画的
C
C
C
音響的
D+ D D
スクリプト
D- D D


(※一.脚本的演出とは、見せ場を指す。出会い、別れ、愛情、信頼、危機、対決、和解、真実の劇的発露)
(※二.作画的演出とは、印象的な絵。構図、背景、表情、所作、衣装、色、光、象徴、対比、レンズ効果等)
(※三.音響的演出とは、音楽と効果音の使い方。挿入歌は含むが、演技とシステムボイスは含めない)
(※四.スクリプトとは、画面効果を指す。アイキャッチ、ワイプ、暗転、立ち位置や表情の変化等も含む)



◆脚本:
(
シナリオ、構成、テキスト、表現)


端的に言って校閲不足、構成術にも難あり。

構成の酷さが、冗漫な日常シーンと音楽の下手な使い方と併せて、ドラマを破壊し尽くしている。

告白などの重要シーンがほとんど脈絡無く始まり、
余韻に浸ることも無く切り替わるので、プレイヤー側は完全に置いてきぼり。
余韻に関しては、音楽が日常系にすぐ変わってしまう事も原因で、特に二作目以降に見られる。

全編に渡って散見されるが、言う(書く)までも無い
ことを逐一並べ立て過ぎている。
例示すると、鏡探しの下り等はシーンの意味する所を解説してしまっている。
(
こういった事は「白恋」の一部においても見られた
)
その上、異なる視点で繰り返し見せられる事も相まって、
蛇に足だけでなく手まで生えている様な印象を受ける。

良く言えば親切ではあるけれど、読み手に自力で理解させようという気が感じられない。

同じ言葉が安易に乱発され過ぎで、好き”、“可愛い”、“真っ赤だけで、
少なくとも合計にして百回以上は使われている。

修辞においても「白恋」から進歩は見られず、例えば、
桜貝のようなという比喩も「白恋」で用いたものをそっくりそのまま使っている。

物語や人物の移ろいに関して、溜めが少ないので良い意味での飛躍も小さい。

悩みも割合サクッと解決していて追い込まれる
ことが無い。
限り限り決着の所まで行き着いた「白恋」とは重みが雲泥の差。
カタルシスの源泉たる抑圧が少ない。
御託を並べて少々のアクションを起こすくらいで、
大概の
ことは解決。口を動かすばかりでドラマが無い。

とは言え三作目までの段階では、人物の紹介を終えた程度な為、
持ち直す可能性は僅かにだが残っている。

親に関する点や寮監の方など、今後明らかになりそうな所の伏線もいくらか見えた。

しかし、およそドラマやカタルシスに関しては、
その花ブランドに要求すべき点ではないのかも知れない。

主に一作目において、会話や行為中の言葉遣いが多少不自然。

違和感のある表現を台詞以外も併せて以下に箇条書きする。
(
ゲーム内時系列順)

一作目

 a. “
毒のように甘い
 b. “
全ての時間帯の○○○ちゃんを愛するだろうなって思ったの
 c. “
わたしの母校で勤務先の病院付属の看護学校に進むんだって
 d. “
あたしは、あたりのスピードで
 e. “
ひとりリトマス試験紙
 f. “
一人リトマス紙

 a.
限定関係:甘い毒のように、なら自然。(どちらも直喩だが、限定関係が逆)
 b.
誤用:時間帯は一日の中を示す。
 c.
説明台詞で修飾過多。
 d.
誤字(あるいは誤植)

e
f. 共通範囲:赤に変わるだけではないので、赤く染まった頬を形容するには不適切。

二作目

 a. “さまの
好きなものをヒアリングして (以下略)”
 b. “
霰もない格好 (〃)”

 a.
誤用
 英語で尋ねるの意味として使いたいならaskが一般的。
 hear
は「聞こえる」の意味で使われるのが多く、
 和製英語として無理に使うにしても
個人を相手に使うのは避けるべき。
 b.
誤用(あるいは誤変換):氷の粒であると、ここに用いるべきあられは別物。

 使われている漢字について、常用外の難読漢字がいくつかあり、
 “
擽る”(くすぐる)“梳る”(けずる・くしけずる)
 “
掬って”(すくって)等、それなりに難しい所もある。
 作中で読み仮名が振られているものに関しては、ここに含めてはいない。
 仮に台詞であれば、基本的には問題にならない。

 人物の毛色は「白恋」に通ずるものがある。(別の毛が無い方もいる様だが)



◇演技:


主に一作目の二人、如何にも新人という感じで、
ここぞという場面でも生気が無く情熱や趣が感じられない。
特に行為中にはそれが顕著に表れている。
一部だが台本のまま読もうとし過ぎている様な感覚。

録音の質自体も今一つ。

好意的に見れば、どちらも伸び代は十分にあると言える。

行為中や泣きの演技における脚本の補足として、この項に付記する。

中毒はまだしも、火だるまとか、死んじゃう等、
行為中に聞かされると精神的に萎えるところ。(“火だるまは台詞ではなく心理描写内)
エクスタシーの解説を始めるのも風情が無い。

想像の域を出ないが、三作目の実習早退後の泣きの演技は、
ディレクター、ライター、音監、声優の連携が全く取れていない様に思えた。
(
個別ブース内での録音は承知しているが、演技指導は出来たはず)



◆演出:
(
スクリプト、画面作り)


基本的に演出と呼べるレベルのものが見当たらない。

寮とは言え部屋を使い回した為、個性を描く機会を喪失している。
これは美術面での意味、小物類で個性を出すのは基本。

三作すべてに見られるが、通常、少しの時間経過や場所移動の間に
挿入されるカット(建物全景や通路など)がほとんど無い。
大きな場面転換や日付けが変わるくらいの際には、キャラを大きく映した画面が稀に入る程度。
(
三作目では、たまに長めの暗転が入る様に多少の改善)

上述の為に、
空間で言えば、教室と自宅
()の間を一瞬の間に脈絡無く移動する事が挙げられ、
時間に関しては、昼と夜の間がそれに当たり、場合によっては日を跨いでいる事すらも。

こうした些細な
の積み重ねが、プレイヤー側にストレスを蓄積させている。

一作目に特に見られる事として、回想シーンが概ねそっくりそのまま繰り返し。
台詞を二重括弧にしたくらいで、何らかの画面処理や省略も無し。

本項の以下は多分に主観的な評になる為、ご容赦願う。

二作目、二人の出会いのシーン。日常系の音楽のままというのが先ず以て残念。
続いて、分割画面にした為に折角のレイアウトが死んでる。
そのまま全体を映していれば、二人の当初の関係を予感させるものになっていただろう。
(
特に優乃視点からの)

しかし、引き換えに表情は捉え易くなっている。

仮にPOV(主観視点)でティルトアップを使えば、プレイヤーは優乃の視点を感じる
ことが出来たところ。

三作目、捻挫に続いての実習後のシーン。
部屋が薄暗く空間情報を減らした分だけ、心理面を描くのに効果的な状況だったが、
如何せん直ぐに行為に入ってしまうのと、使用された音楽が日常的過ぎて惜しいものとなっている。

同じく三作目、青文字シリーズ最大の見せ場と思われる、
身上を告白するシーンについてだが、明るい寮の部屋でというのはどうなのだろうか。
加えて上に同じく、直後に行為というのも強い違和感を感じる。
(
とりわけ故人の話の直後というのが、その感覚の直接の原因である)

余計なお世話であると重々分かってはいるが、
シーンが練られていないだろう事を顕示する為に、
あえて失礼を承知で以下に例を挙げさせて頂く。

どうしても部屋にしたいなら、吐露する側の部屋を使う方が無難な所。
(
部屋を心の象徴と捉える)
初めて入るのであれば尚の事良いし、普段は鍵でも掛けてあれば一層引き立っただろう。

仮に寮内に限定したとしても手はあった様に思える。
例えば話の内容的に、屋上に出て星でも観ながら、場合によっては雨でも降らしたりする所。
(
一例としてだが、星は故人の暗示、屋上は少しでも天に近く、
夜闇は心を照らす、雨は言うまでも無い)

これらは予算も考慮して背景を使い回す
ことを前提としたもの。



◇作画:
(
キャラクターデザイン、原画、塗り)


複雑と思われる構図を巧く処理しているし、遠近感を捉えていて骨格や筋肉にも違和感が無く自然。
春恋の個別CG5枚目14枚目における、広角パースは作画演出と思われる。
(
簡単に言えば、カメラ側手前が大きく、奥が小さく映るという
こと)

アップショットの際に目に付く点として、顔と体のデフォルメ具合の統一が不十分と思われる。
(
体が顔に比してリアル寄り)
顔だけで見ても耳の描き込みが他より多い、但し三作目タイトル画面では修正(補正)が伺えるが、
今度はデフォルメ過剰になっている。

系統で言えば少々カエル系の顔立ち。これは好みの問題。

引きで見れば概ね違和感は無い。

以下に不自然さを感じる箇所を列挙する。
(
表示例 1-2 一作目のCG二枚目)

 1-1
驚き顔、不自然な指 (りんご) 
 1-2
1-7 横顔の凹凸 (りんご)
 1-9
 鼻と口の位置 (りんご)
 1-10
肋骨部全体 (りんご)
 1-18
平面顔 (りんご)
 2-8
 耳の角度、輪郭 ()
 2-11
精細過ぎる指 (二人)
 3-1
 平面顔 ()
 3-8
 過剰な小指球筋 ()
 3-18
髪の生え際 (成美)



◆音楽:


曲は相変わらずチープなものが多い。使い回しは多いが、曲数だけは立派なもの。

質を高める為に年間に三曲で良いから全力で作曲して頂きたい。

使い所を誤った様に感じる箇所もある。
(
二作目の告白後のシーン、三作目の捻挫後の下りなど)



◇効果音:


特筆すべき点は無し。



◆背景:


初期の同人時代から僅かに進歩している、若干ながら情報量が増えた。

少し気になったのが時間が経過しても時計の針がそのままという
こと



◇システム:


ウインドウ透過度の調節はあった方が良い。
演技の実情からして、個別音量調整機能が求められるだろう。

最低限必要なものは揃っている。



◆他:


選択肢は多少考える必要のあるものになっている為、
それまでの内容や相手の視点を頭に入れておく事になる。
一作毎が短いので気を張る程ではない。


◇結語:


「白恋」とは舞台と人物の描写のみが似ていて、あとは全くの別物。

その他の「その花」シリーズは、ぺこ氏の原画に無上の価値を覚えるが、
青文字シリーズはそれもないので、物語の方を重視してみたものの、
主に時間と構成に演出、演技の多くが制約となってカタルシスは得られなかった。

看護学校の雰囲気を知る
ことが出来たのは良かった。
看護観の下りは、「白恋」同様に聞き応えがある。
しかしあちらとは違って、看護や医療が精神的にモチーフの役割を果たしていない為、
興味が無い方には無意味だと言える。

赤文字シリーズの様に新装版を出す
ことがあるなら、
演出面の強化とシナリオの補填を行う
ことで、本作は再起するかもしれない。
機材の刷新、演技の再録もあると尚の
こと良いだろう。

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